言葉にするとだいぶ陳腐な感じがしますけど、流石にベテランなので己の持ち味を生かしつつ、グイグイと物語を引っ張っていきます。全20巻なのですが、いくつかの章に別れておりダラダラとした印象は受けません。ただ物語が進んで凄惨な内容になってくると、流石にギャグや下ネタでもあまり笑えなくなってきますね。というかそれらを投入する雰囲気じゃないというか。まぁ無理もないですけど。
いくつかの伏線の謎解きがされずに終わってしまったのも残念です。例えば初期の悪役である赤堀大臣の娘とか。初登場のSM嬢時のセリフからして何かあると思ったのですが、あっさり殺されちゃいましたし。バベンスキーが語ったタイムマシンの謎とか、海外のレジスタンス組織とか(これは微妙かも)。
アマゾンのレビューとか見ると結末が納得いかない方が多いみたいですね。確かに上記のような謎やゲノム党のその後とか気になる所ですが、作者も後書きで書いている通り、物語の本質は狂四郎が世界そのものを救う事じゃないのですよね。狂四郎にそこまでの力はありませんし、彼自身、惚れた女と犬(笑)を守ることで精一杯だと言うことを充分理解していますしね。その変わりその小さな幸せは、たとえ世界中を敵に回してでも守り抜くと。まぁ読者からしたら、あんな中途半端で終了されても困るって言うのは充分理解できますけど。あんな悪党達を残しておいていいのかよって感じで。
私見ですが、徳弘さんて理知的ですごく照れ屋さんなんだろうなぁって気がしています。主人公に正論を吐かせたり、感動的なシーンなんか書いちゃうと、自分で恥ずかしくなっちゃうのかすぐにネタに走りますし。終盤はさすがに少ないですけど、途中までは数ページに一度は必ず下ネタやベタな落ちにしますからね。こんなに頻繁にネタに走る人って少ないような……。まぁそれがこの人の持ち味でもあるのですが。ちょっと違いますが、椎名高志さんに印象が近いかなぁ。この人もとても理知的なんだけど、天邪鬼なところがあるし(笑)。そういう人、私は好きですけどね。
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